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【第68回日本神経化学会大会で優秀発表賞 受賞】
大学院バイオ?化学専攻?小島研究室の中村明衣梨さん。
神経栄養因子BDNFにおける未解明の課題に着目。将来的には創薬研究に資する可能性も

2026/1/17 NEW

金沢工業大学大学院バイオ?化学専攻博士前期課程1年の中村明衣梨さん(小島研究室)が第68回日本神経化学会大会で神経栄養因子BDNFにおける未解明の課題に着目した研究成果発表し、優秀発表賞を受賞しました。

第68回日本神経化学会(JSN)大会は、国内の神経化学研究者に加え、世界各国から同分野の第一線の研究者が参加する国際的な学術集会として開催されました。
1957年に設立された日本神経化学会は、「神経化学」を標榜する我が国有数の歴史ある学術団体として、基礎から応用に至る神経科学研究を牽引し、世界の神経化学研究の発展に大きく貢献してきました。今回の第68回大会には、過去最多となる931名が参加し、神経化学分野が基礎研究から臨床?応用研究へと着実に広がりを見せ、現在も活発な発展を続けていることが示されました。

金沢工業大学バイオ?化学部?大学院からも大学院生が研究成果発表を行い、バイオ?化学専攻の中村明衣梨さん(小島研究室所属)が、神経細胞の発達を促進する新たな分子メカニズムに関する研究成果を発表。第68回日本神経化学会大会「優秀発表賞」を受賞しました。

本年度は、260件を超える発表ポスターを対象に審査が行われ、学部生4名、大学院生13名が受賞者として選出されました。2025年9月13日に執り行われた授賞式では、中村さんが大会会長?澤本和延 名古屋市立大学教授より同賞を授与されました。

発表内容

ポスター発表 タイトル:

神経栄養因子BDNFとその前駆体からの副産物BDNF pro-peptideの作用差の研究:樹状突起と軸索に対する相反作用

共同研究者:

?中村明衣梨(金沢工業大学大学院バイオ?化学専攻博士前期課程1年)

?小島正己(金沢工業大学バイオ?化学部 生命応用バイオ学科教授)

?宮田実咲(富山大学生命科学先端研究支援ユニット動物実験施設技術職員)

発表の概要と意義

発達期の神経細胞を制御する新たな分子機構を解明
― BDNFと「副産物」BDNF pro-peptideの機能的関係に着目 ―

脳の発達や学習?記憶に重要な役割を果たすことが知られている神経栄養因子BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor)。これまでの研究により、BDNFが神経細胞の生存や成長、神経回路の形成を支える主要な分子であることが明らかにされてきました。

一方で、BDNFが細胞内で作られる過程において生じるBDNF pro-peptideという分子については、その機能や意義が十分に解明されていませんでした。BDNF pro-peptideは、BDNFの前駆体が成熟する際に切り出されるいわば「副産物」として扱われ、長年研究の対象となってこなかった分子です。

本研究では、このBDNFとBDNF pro-peptideの機能的関係が未解明である点に着目し、特に発達期にある神経細胞を対象として、両分子がどのように神経細胞の働きを制御しているのかを詳しく解析しました。発達期は神経細胞が形態を整え、正しい相手とつながる極めて重要な時期であり、この過程の異常は将来の脳機能に大きな影響を及ぼす可能性があります。

実験手法として、低密度培養および、細胞染色、顕微鏡による画像取得からSholl解析を用いた神経細胞の形態解析を行いました。その結果、BDNFが細胞体からの樹状突起の突起数の増加?伸長促進する一方で、BDNF pro-peptideは軸索の伸長を促すことを明らかにしました。神経細胞が樹状突起と軸索という二種類の突起を有することは古くから知られていますが、一つの前駆体から生成された二つの分子が、それぞれ異なる突起の成長を選択的に制御するという発見は、極めて新規性と独創性に富むものと考えます。

本研究の成果は、BDNFのみならず、その生成過程で生じるBDNF pro-peptideもまた、神経発達において重要な役割を担っている可能性を示すものであり、脳発達の分子基盤に関する理解を一段と深めるものです。今後、発達障害や精神?神経疾患の病態理解や、新たな治療戦略の創出につながることが期待されます。

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